「アジア電子回路産業の将来ビジョン」発表原稿
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ここに御集まり頂いた皆様、ECWC8も、いよいよClosing-Ceremonyを迎えました。JPCA国際化推進委員会、副委員長であります橋本浩でございます。本日でECWC8が幕を閉じますが、遠路はるばるご参加頂いた方々、会議の準備、運営にご尽力頂いた方々に厚く御礼申し上げます。
本日、私は、アジアのプリント配線板産業並びにJPCAを代表致しまして「アジア電子回路産業の将来ビジョン」というタイトルでお話したいと存じます。
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本日お話致します内容は、大きく3つのセクションに分れております。第一に電子回路産業を取り巻く世界的環境変化について、主にエレクトロニクス産業における産業構造の変化を述べます。第二に電子基板の需要動向について、特に世界の需要予測、期待が大きいデジタル家電市場などについて述べます。第三に電子基板製造におけるアジアの果たす役割について述べたいと存じます。
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なお、本日の講演内容で多用致します用語について、予め簡単な説明を加えておきたいと存じます。
◆“電子基板”とは、プリント配線板、モジュール基板(PKG基板、MCM基板)等です。
◆“電子回路”とは、電子基板(プリント配線板、モジュール基板)をはじめ、半導体実装などを含めた総称です。
◆CM(Contract-Manufacturer)は、下請け・限界供給者ではなく、ブランドメーカが予め予定して製造を委託する製造専門企業です。
◆EMSI (Electronic-Manufacturing-Services-Industry)は、電子機器製造に係る部品調達、基板調達、電子回路実装に加え、在庫管理や物流、顧客に対する技術サービス等をブランドメーカに替って提供する企業群であります。
◆Solution-Providerは、電子機器の製造フロー上で、複数業務を統合し、コスト、納期、品質管理等の製造に係る必要な“解“をブランドメーカに提供するEMS企業です。
◆Parts-Supplierは、顧客からの受注部品、計画生産した部品を供給する企業です。
◆SCM(Supply-Chain-Management)は、受注してから納品までのリードタイム短縮と在庫削減を目的とした、製造、調達、物流等の必要なモノの循環を総合的に効率化する経営手法であります。
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では、第一の電子回路産業を取り巻く世界的環境変化に入って行きたいと存じます。欧米や台湾では周知でありますが、欧米の名だたるブランドメーカの多くが、デザインとマーケティングをビジネスのコアコンピタンスと認識し、製造に関連する全ての要因、例えばデザイン、マーケティング、製造、技術等の全てを取扱う事は困難と判断せざるをえない状況に直面しました。そこで彼らは、メーカーからブランドメーカに変身しました。この背景としては、製造業にとっての固定費が増大してきたこと、商品Life-Cycleが短命化したこと、調達部品のインベントリー化が進んだこと、また企業経営がファイナンス重視の傾向を顕著にしてきた事などが挙げられます。加えて、1991年以降、インターネット関連の情報通信企業が多数出現しました。彼らは、それまで存在したブランドからすると、いわゆる「グリーンフィールドコンペティター」と呼ばれる「見えざる敵、競合者」の出現だったのです。そして新興勢力を形成しはじめました。彼らは、元来、製造機能を持ちませんでしたから、製造にかかわる機能をどんどん外注して行ったのです。従来からの電子機器メーカと新興勢力が同時に製造のアウトソーシングを活発化させた事に加え、情報通信機器市場では時間という要素が実に重要になり、今日CM(Contract-Manufacturer)やEMSI(Electronic-Manufacturing-Services-Industry)と呼ばれる企業、企業群がサプライチェーンマネジメント(SCM)を経営基盤として急成長してまいりました。
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それでは、製造業の産業構造はどの様に変わったのでしょう。PCと携帯電話端末を例に挙げます。
情報通信機器市場の成功のキーワードは、TTM(Time-To-Market),TTC(Time-To-Customer)であり、複雑なモノ作りより、水平分業化した部品調達構造で、如何に早くお客様に商品をお届けするかが重要です。例えば、デスクトップPCでは、マザーボードの生産地は既に中国に移転しつつありますが、重要な事は、ブランドメーカが自前の工場でPCを製造するケースは希であるという点です。また、既に製品企画が各種デファクト・スタンダード化された周辺機器の取捨選択で行なわれている点が特徴です。典型的な水平分業構造といえましょう。当然、マザーボードの設計・生産はCM/EMSIにアウトソースされています。ポータブルPCですら、製造のアウトソースは急速に進んでおり、LCDを含むオールインワン形態で製造/販売が行なわれています。
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次に近年爆発的に普及している携帯電話端末を見てみましょう。基本的に消費地近隣で生産されておりますが、先端モデルは本社近隣/研究所近隣で生産されており、技術の選択肢を多く残しています。これは垂直分業の典型的な構造です。
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先程触れましたEMS(CM)の台頭は、近年、顕著であります。EMSIの生産規模は1998年で900億ドル、2001年で1,800億ドル程に達すると見られています。それでも、現在のアウトソースビジネスは12%程度であり、残り80%近くが大手電子機器メーカの内製です。2001年にEMSの生産額は20%のシェアに到達すると予測され、将来はひょっとすると、EMSの生産規模がブランドメーカの内製分と同程度になる事も考えられます。
さて、我々電子回路産業にとって大変関心が高いのは、基板調達構造が変化するという点です。つまり、CMの売上高に占めるPWBのコストは、5%程度と言われますが、現時点で5千億円、2001年では1兆円の需要に相当します。PCなどの代謝型サイクルのある市場は確実にEMS需要へと転換していくでしょう。
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大変に大きな規模の買収によって企業規模を拡大しているEMS企業ですが、プリント配線板ビジネスは、資本関係の中に取込まれていません。この理由は、生産規模と収益を比較した左の絵を見て頂ければ明確ですが、事業規模が小さく、技術が多岐にわたり、コストメリット出せない、収益貢献が難しい、などです。しかし、先程、携帯電話市場でも見たように、技術主導型市場では、プリント配線板がKey技術であります。したがって、技術先行型市場では、PWB技術開発はプリント配線板メーカに依存せざるを得ないのです。特に、今後デジタル家電市場が立ち上がって来ると、電子基板には、高速化、熱解析、EMC対策、環境対応等の技術が要請され、プリント配線板技術は大変に重要な役割を担っていくと考えられます。
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それでは、第二の議題であります「電子基板の需要動向」に移ります。ここでは、世界のPWB需要予測を行ないました。世界の電子機器生産額を用途別、地域別に予測し、日本のPWB投入係数を予測しました。この日本の投入係数を世界の各地域に適用し、地域別/Application別にPWB需要を予測したというロジックであります。
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日本のPWB投入係数は、全体で3.2%程度です。多層板の通信向けでの投入係数が最も高い値となりました。過去5年間の傾向を見ながら、我々は2001年、2004年の投入係数を予測しました。
全体の投入係数は同じですが、通信、コンピュータ用の投入係数が若干増えており、コンピュータ周辺機器やモバイル携帯端末の成長とともに、今後益々、難しい電子基板が使われていく事が期待されます。
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PWBの需要予測結果を示します。これは地域別に見た予測結果です。アジアには東欧、南米などのその他地域も含まれておりますが、このアジアとそれ以外の地域における需要金額の成長が他の地域に比べ圧倒的に大きい事が分ります。日本を含むアジアがPWBの50%以上を消費すると期待されます。
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次に用途別の予測結果を示します。コンピュータ、通信向けが規模、成長性ともに高く、市場を牽引する事が予想されます。
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最近、急激に成長している半導体のPackaging-Substrate市場や、ビルドアップ基板に代表される新しい電子基板などの先端電子基板の伸長が、今後も大いに期待されます。新しい市場では、2千5百億円規模のPKG基板、Buildup等の新工法基板は3千億円規模へ成長する事が期待されています。また、来世紀に向けて最も重要な環境対応材料ですが、これから急激な市場立上げが起こると期待され、ノンハロゲン材料の投入比率は現在の3%から、2005〜2010年で50%を超えると予測されています。電子回路基板市場の成長は、まさに、多くの技術革新が牽引していくものと確信致します。
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本日、ここでどうしても触れておかなければならない市場がございます。それは、大変に成長が期待されるデジタルAV市場であります。この市場は、今後、急速に成長し、日本及びアジアが生産を担っていくと期待されます。情報通信機器の高性能化に加え、デジタル家電市場の勃興が起こっていくと思われ、電子回路産業に対する技術革新の要請も顕著になっていくものと認識されます。特に、環境対応での鉛フリー化、ノンハロゲン化、高速化対応では熱解析、EMC対策、さらに、電子回路のインピーダンス整合は、製造技術や電子部品を電子基板に埋め込んだ新しいタイプの技術を創出していく事でしょう。
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それでは、最後のセクションに入ります。これまで述べてきましたように、電子回路産業は、水平分業と垂直統合の2つの構造へ2極化してきております。しかし、新しい電子機器の創造に際しては、電子機器の企画、LSI設計・製造、PKG、電子回路設計・製造、部品実装の総合力が試されるのです。勿論、PCのようなデファクトスタンダード化が進行した成熟市場では、水平分業構造へ進んでいくでしょうが、その中でも、モノ作りのKey-TechnologyはLSI開発と電子回路基板とに蓄積されていくでしょう。
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このように水平分業化していく一方で、むしろ、垂直統合化、ないしは垂直分業化の方向へ進んでいく市場もあります。日本では、従来から垂直統合型の産業構造を特徴としてきましたが、先程触れました、デジタルAV機器市場は、日本始めアジアから情報発信が成されていく市場になると期待しております。つまり、LSI技術、Interconnection & Packaging(実装技術)、電子基板技術の各々の技術革新により成立する市場であり、技術的にパイオニアである企業が、技術課題を克服していくようなトータルソリューションを提供できる産業構造を成していくでしょう。そこで指向すべきは、ウィン-ルーズ(Win-Lose)でなく、集団的ウィン−ウィン(Win-Win)の関係を構築していく事だと思われます。
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繰り返しになりますが、電子基板の製造はEMSが手を出せない市場でありました。逆に言えば、限られた付加価値は電子基板に残るという事です。今後のデジタルAV機器市場の成長では、アジアが情報発信基地になるでしょう。こうなると、LSI、実装、電子基板技術を垂直的に分業化し、モノ作りにおける各々の役割分担が、益々明確化していく必要がある市場が存在すると言えましょう。
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最後に、アジアの役割・分業構造の変革に向けて幾つか提言したいと存じます。従来は、米国が創造し、アジアが製造を請負ってきました。今後は、アジアが新しい電子機器を創造し、自ら材料/装置/製造技術の開発を牽引していく役割を担っていく必要があります。そこで、電子回路産業の材料技術、装置技術、製造技術のたゆみない研究開発を継続するためにも、公平なルール作りが必要でありましょう。
また、世界的に電子基板単体でのビジネスに限界を痛感して参りましたが、限られたパイの中での「奪い合い」から脱却し、集団的Win-Win関係を構築していくべきと考えます。
アジア電子回路産業は、成熟分野においては「水平分業」構造を、開拓分野においては半導体から電子回路までの「垂直統合」構造と、工程別に部分的なソリューション提供を分業して行く「垂直分業」構造を指向していくべきです。
そこで、アジアの産業課題と各団体の役割を明示し、お互いが連携を強化して行くべき時代がやってきたと感じております。
【スライド19】
前回の世界大会「PCWC7」では、アジアは世界の製造拠点として成長が期待されましたが、能力増強による需給ギャップの拡大が価格の急速な下落を招いてきました。その間、ユーザ業界構造の変革は急であり、PKGやビルドアップ基板などの出現、環境材の使用等の新しい技術展開を要請されております。今回の「ECWC8」では、世界的に様々な課題、問題が個別企業では解決できなくなってきた事を皆様が強く認識されている事でしょう。お互いの強み、弱みを認識し、共生していく道を模索すべき時代に入ったのです。すなわち、「個別企業の論理」から、「共生の論理」へと転換していきたいと思います。
【スライド20】
我々は、「アジアの協調の時代」を目指し、世界の電子回路産業に貢献していく事を誓いたいと存じます。
本日は、ご静聴、誠に有り難うございました。