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「大胆な予測」

 桜の季節が終わりました。今年は晴天に恵まれ、どこも人出が多かったようです。鍋釜を持ち込んで料理を作る人、高級カメラを三脚に据えて構えるおばあさん。車椅子の人も多くみかけました。花の下ではどの顔もおだやかで、「これなら日本はまだ大丈夫だ」と安心しました。

 花見は平安のころからつづいていて、庶民が街をあげて桜を楽しむという習慣も二百数十年の歴史があるそうです(杉浦日向子)。戦国時代、明治維新、戦争、昭和の大恐慌もありましたが、花見はつづいてきたのです。「花の下にてわれ死なん、そのきさらぎの望月のころ」という西行の歌は八百年も前の歌です。それがいまも多くの日本人の心をとらえています。

 経済はますますめまぐるしく変わり、その振幅は年々大きくなるようです。経済の変化によって社会や文化も変わっていきますが、こちらの変化は非常にゆっくりしています。多分世代が代わるごとに少しずつ変わっていくのでしょう。今「日本は悪い方向に向かっている」と考える人が増えています。しかし日本は過去に何回も未曾有の困難を乗り越えてきました。敗戦もオイルショックも、世界でもっとも条件が悪いといわれながら、一番うまく切り抜け、かえってそれを土台に飛躍することができました。それを可能にしたのは日本の文化であり社会なのです。これが崩壊してしまわない限り日本はこれからも経済の激変を乗り切っていけると信じています。

 ただし文化、社会が崩壊する危険性が大きくなっているとはいえるでしょう。グローバル化により何でもアメリカのスタイルが「世界標準」として礼賛されて広がる結果、各国、地方の個性のある文化が衰退し、ある日突然絶滅してしまうこともありそうです。経済は我慢すれば長くても2、3年で回復するでしょうが、今まで日本を支えてきた職人たちが消えていき、物づくりに無関心な若者が増えてくれば日本の活力はじわじわと衰えてくるでしょう。

 なお、マスコミの「日本ダメ論」はほどほどに聞いておいた方がよいと思います。この手の記事は評判を気にする弱気の日本人によく売れるので「メシの種」にされているのです。良識のある識者や経験豊かな経済人はそうは見ていません。改善すべきところはいろいろあっても基本的な条件(ファンダメンタルズ)は世界でもトップクラスと皆いっています。お互い、日本経済の活力、そして文化、社会に自信を持って、この不況を乗り切ることを考えていきたいものです(図1)。

 さて、表題の「大胆な予測」はプリント板の需要見通しです。図2は1975年から1996年までの約20年間のプリント板の生産推移です。その中間1985年は世界同時不況の年です。この年を境に年率23%もの急成長に急ブレーキが掛かり、以降11年間の平均伸び率は4%にとどまっています。途中1991年は一時的にピークになっていますが、この年はちょうど日本のバブル景気のピークにあたります。プリント板生産の山谷はバブル期の地価の高騰、下落と同期しています。バブル後の地価はバブルがなかった場合のゆっくりした価格上昇ライン(年率3%前後)まで下がり、そこで落ちつくだろうといわれました。現在このあたりまで地価が下がって、海外資本からも買いが入るようになっています。これから日本では小子化・高齢化や生産基盤の空洞化がすすみますが、それらを考慮に入れたGDPの伸びが予測されています(注1)。それによれば1995年から10年間のGDPの伸び(名目)は年率2.9%となっています。プリント板についてもいろいろ事情はあるでしょうが、控えめにみてもGDPなみの成長は期待できるでしょう。過去10年の実績4.1%はこれより少し高い数字ですが、マルチメディア、情報産業という成長分野の一翼をになうプリント板産業にとって十分可能な数字ではないでしょうか(注2)。弱気な数字との批判もあるでしょう。しかしずるずる落ち込むのではないかという不安もあるのです。長期にみればこれぐらいはいけるとなれば具体的な方策も立てやすくなるのではないでしょうか。

 なお全体としてゆるやかな成長が続くとしても、これに短期的な変動が加わり、また製品構成にも変化が出てくるので(注3)、各企業はそれぞれの棲み分け場所を見直すことも必要になるでしょう。海外も含め競争は相変わらずきびしいでしょう。

注1.日本経済研究センター(98.2.26日経)。ここでは設備投資はあまり増えない。研究 開発費が成長を大きく左右するとされています。
注2.米、調査会社TrendFOCUS社のハードディスク出荷予測(4/24付。2001年までの4年間)によれば、台数で年率14.3%伸びるものの、価格低下により金額ベースでは4.1 %の伸びにとどまるとしています。偶然ですが上の予測と一致しました。
注3.過去10年間に多層、フレキは10%以上の急成長となった一方で、両面は横ばい、片面は減少となりました(図2)。ただし片面板はなお1,000億円の大産業です。中低密度ですむ分野では一番コストパフォーマンスの高いプリント板としてこれからも使われるでしょう。



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