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「プリント板のリサイクル」

 犬と同じで毎日散歩しないと体が落ちつきません。多摩丘陵には緑が多く残っているので、それを縫うようにできるだけ車の通らない散歩コースをいくつか作っておき、コースを変えて歩いています。ダンチや街中はきれいに整備されていても面白くないので、できるだけうねうねした昔の道や川沿いに歩きますが、最近散歩の楽しみをそがれることが多くなりました。あちこちにゴミの不法投棄が増えてきたからです。ある日、自動車、自転車、バイク、家電などのゴミが捨てられ、次の日にはそこに別のゴミがまた捨てられるといった有様です。この分では今に日本中がゴミの山になるのではないかと心配されます。

 今回は電子機器やプリント板のリサイクルや廃棄について考えてみます。家庭、工場、建設現場からは毎日大量のゴミが出ますが、その捨て場がなくなりました。各地で廃棄物の最終処分場の立地でもめています。かつては村のはずれに捨てていたのが、ゴミが増えるとともに捨て場も遠くなり、山奥、無人島、海、あるいは海外にまで、合法的にあるいは不法に投棄されてきました。しかし今では人の住まない辺境や、環境汚染が許される場所は地球上どこにもなくなりました。環境問題には地球温暖化や環境ホルモンが大きく報道されています。これらは10年、20年後人類に大きな災厄をもたらす危険がある大問題です。一方、ゴミの捨て場は1,2年で満杯となり、いっきにあふれ出すのは確実なのです。誰も新しい処分場の必要は理解しますが、みな「うちの裏庭にはいやだ」と自分の近くに処分場を作ることには反対します。瀬戸内海に浮かぶ小島、「豊島(てしま)」の不法投棄事件[1]をみても、反対を住民エゴといってしまうのは酷でしょう。周囲20キロの小島に50万トンのゴミが捨てられたのです。その三分の一は自動車のシュレッダーダスト(廃車113万台分)といわれます。自動車は年間950万台が生産され、500万台が廃車になります。廃車となった車は分解され、70〜75%は何らかの形で再利用されますが、残りはシュレッダーで破砕されどこかに捨てなければなりません。なお車の寿命は20年以上ありますが、買い換えは平均して7〜9年です。

 さて電子機器はどうでしょうか。家電リサイクル法案が2001年から施行される予定ですが、当面はテレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機の4品目だけが有料回収され、パソコンはその対象外になっています。しかしパソコンは年間800万台(自動車生産台数並)ほども生産され3年ほどで買い換えられるのです。また廃パソコン、なかでもプリント板はほとんど再利用できず、砕いて捨てるしかないといわれます。パソコン各社ともリサイクル技術の形成に懸命ですが、まだ環境対策としてのはんだの分離技術などにとどまっているようです。このままでいきますと年間800万台の廃パソコンが行き場を失って野山にあふれるようになることは確かでしょう。

 これに対してどのような解決策があるでしょうか。プリント板については「解体して再利用」や「原料に戻す」リサイクルはまず難しいでしょう。次にあげるような、基本的にゴミを減らす、出さない設計や使い方が中心になるでしょう。そしてこのような方策は電子機器に限らず自動車、住宅などすべての製品の将来向かうべき方向であろうと思います。

1)製品を長持ちさせる。
 半年ごとに新製品が出てはしらけます。「孫の世代まで使えるパソコンは作れないか」という人もいます[2]が、今の3年前後から5〜10年程度(車やテレビ並)まで伸びるのは確実でしょう。そのためにはソフト、ハード両面で、時代の変化に対応できる設計のフレキシビリティと製品の信頼性向上が重要であり、また修理ビジネス[3]や再生ビジネス[4]の整備も不可欠です(図1)。

2)リユース(再利用)
 リユースはシステムの一部をそのままの形で他に利用することです。たとえていえば臓器移植です。なお、リユースには部品だけでなく、基本設計、デザインから部品調達までの再利用も対象になります[5]。

3)土に還ることのできる原材料で作る。小さく作る。
 最終的な廃棄をゼロにすることはできません。それを捨てられるようにするには処分場所在地の住民の理解が得られるよう、環境汚染がなく土に還ることのできる材料で製品が設計され、解体、分別が容易に行え、そしてその分量が少ないことが求められるでしょう。廃棄物の量を減らすためにも機器の小型化は今後ますます必要となるでしょう。

 リサイクルの機運が高まるとプリント板の需要が減るのではないかと不安を持たれると思います。量的に(目方で)減るのは確実でしょう。しかしプリント板は電子機器の「コア」として今後重要性が高まると考えます。機能、信頼性を高めることにより金額的には成長を続けられると信じています。ただし図2の簡単なシミュレーションでみられるように、短期的には販売量が落ちつく水準の上下に大きく変動します。最近のパソコン販売の低迷はリサイクル意識の高まりによる一時的な落ち込み分も大きいと思います。パソコンの利用は確実に増えているのです。

[1]豊島には7年間に50万トンの産業廃棄物が運び込まれ、ダイオキシン、鉛、水銀、カドミウム、PCBなどの環境汚染が発生しました。ハマチ養殖業者は廃業、ミカン、水産物も売れなくなったという。(「自動車の終着駅」立松和平。中央公論98.5)
[2]日経98.4.11「風向計」
[3]建設市場で日本では総額の15%が維持補修。欧米は30%、英国では50%。日本もリニューアル部門が欧米並まで伸びると予測されている。(日経98.2.19)
[4]IBM再生事業。パソコンのCPUやHDを新型に交換して再生。(日経97.6.10)
[5]システムLSIでは既存の回路ブロックを組み合わせて新しい機能を実現する。このような回路ブロックの設計情報はIP(知的財産)と呼ぶ。
[6]フォードモーターはリユース率50%を掲げた。再利用できる経営資源はすべて利用し、「価値を生み出さない変化はいっさい認めない」方針。(日経98.5.15)。




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