石造りや煉瓦積みの建物では昔から「くさび状」の石や煉瓦を組み合わせて建物の荷重を圧縮力だけで支えるように設計されてきました。世界最大の自然橋も圧縮力だけで支える見事な形をしています(図1)。昔のJRのトンネルは上り、下り用が別々で幅が狭く、入り口は教会の窓のようにくさび状に組んだ煉瓦造りでした。コンクリート工法の技術は進んだと思いますが、基本的に引張りに弱い材料であることを忘れてはならないと思います。報道によると施工の現場ではコールドジョイントという言葉も知らなかったそうですが、本来、石造りのようにコールドジョイントがあってもこわれない構造に設計すべきではないでしょうか。
「凹んだ角には鬼が住む」これは森口先生の言葉です。「もんじゅ」ナトリウム流出事故はこれを考慮しなかったばかりに発生しました。液体ナトリウムの配管中に温度計のさや(検出端)が挿入されていました(図2)[2]。内径4mmに対して外形は10mm(肉厚3mm)もある丈夫そうなさやです。しかしその形状が「非常識」であったために使用中Aの部分で折れてそこから危険なナトリウムが漏出しました。この形状のどこが悪いのでしょうか。それはA部の角が120゜でシャープに加工されていることでした。このようにシャープに凹んだ場所には応力が集中するのです。角がシャープなほど応力の集中度合いが大きく、簡単に角以外の部分の10倍以上に(理論上は無限大に)なるのです。そこで、角には鬼が住む、何が起こるかわからない、ということになるのです。これを防ぐためにこのようなシャープな凹部には丸みを付ける(職人言葉でRを付ける)ことが絶対に必要なのです。これを森口先生は「魔よけのまじない」といいます。設計者は図面になぜ120゜と入れたか。それは丸棒から穴をくりぬくドリルの先端角が120゜であったため、外形も120゜にしてしまったのです(プリント板の穴明けに使うドリルの先端も大体120゜)。あまりにお粗末といわれますが、筆者はとても笑えません。設計者が全員このような危険を理解して設計しているでしょうか。また、この事故の場合、照査、承認といった設計部門のチェック機構は全然働いていなかったのです。
最近の高速道路標識の支柱落下事故。支柱は地面に当たる部分で折れて(はずれて?)落下したものです。肉厚8mmの図面指定のところが6mmになっていたためと報道されていますが、筆者にはそれより支柱の根元への応力集中が原因のように思われます。
プリント板パターンの断線にも応力集中によるものがあるようです。以下は最近のあるホームページに出ていたものです[3]。「最近、ビデオカメラ等でモジュールのサーキットパターンが切断するというトラブルが多発している。切断とはいっても数Ωから数百Ωの抵抗成分がある場合が多く、その抵抗成分は一定でない為、一見直ったかなと思ったらまたおかしくなるという様なトラブルが多い。また、この様なトラブルでメーカーに修理を依頼しても『パターンが切れていたのでジャンパー線を張りました。』などという修理報告書を出しません。通常の使用状態でパターンが切れる事などメーカーの恥じなので結局、『××IC不良、交換しました。』という様なウソの修理報告書になる訳です。この様な訳でパターン切れトラブルの実体は隠されている。
図3はランドとラインの2つの接続形状を示している。デスクトップパソコンの様に、室内の一定環境の中で使用される機器の場合、形状(a)でもトラブルの発生は少ない。ところがビデオカメラの様な、多様な環境で使用される機器での切断トラブルは100%形状(a)で起こる。原因は振動や筺体内の温度変化によるプリント基板の歪みと思われる。この問題は古くからあり、信頼性を高めるには形状(b)が採用されている。設計者も分かっていると思うのだが。不景気でコストの低減が優先されるからか!…」。プリント板のパターンにも鬼がひそんでいるのです。