JPCA NEWS 1999.10

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「ウィン・ウィン(Win-Win)への道」

 3年に一度日米欧持ち回りの電子回路世界大会が9月に東京で開かれ1000名以上が集まりました。盛況のうちに終わり、業界だけでなく日本にとってもよかったと思います(筆者も日の丸)。事務局、関係者のみなさんにはご苦労様でした。

 参加者の人数をみると、日本が8割を占めるのは当然として、アメリカ80、ドイツ28、台湾15、韓国14、英国13の順となっています。ヨーロッパからは合計92人の参加があり、アジア合計87人をわずかながら上回っています。生産高で見るとヨーロッパはアジア(日本をのぞく)の60%程度ですから、ヨーロッパの業界の方が視点を遠くに向けているといえるでしょう。

 閉会式では恒例により日米欧の代表から地域の動向についての報告がありました。ここではアメリカ、日本からの報告から2,3をひろって紹介します。

 まずプリント配線板の需給について。表はIPCとJPCAのレポートから一部を抜き出して比較したものです。IPCはかなり強気で年率7.5%の成長を見込んでいます。それを牽引するのは通信とコンピュータです。ヨーロッパからはIPCほど強気な予測はできないがそれなりの成長は期待できるだろうと控えめなコメントがありました。JPCAの予測もかなり元気な数字で、IPC同様、通信とコンピュータに高い伸びを見込んでいますが、とくにディジタルAV(ディジタルテレビ、ディジタルカメラなど)が年率30%で急成長すると予測(期待?)されているのが目につきます。

表 プリント配線板の生産実績と伸び率の予測(金額は百万ドル、伸び率は年率%)



 米国(IPC)世界(JPCA)
 1998実績伸び率 1998実績伸び率 

  コンピュータ2,0397.3 10,9289.5 
  通信(有線、無線)1,25911.2 5,35616.7 
  民生  3,7883.6 
  ディジタルAV  13,44932.0 
  計7,8447.5 30,1645.5 

注.IPC伸び率は1998->2002年、JPCA伸び率は1998->2004。合計には「その他」を含む。

 一方世界的に電子機器、プリント配線板の産業構造は大きく変わってきています。表のような成長が実現するとしても、従来からの製品や生産技術、取引形 態のままでは今後生き残っていくことは難しいと日米欧の3人ともが強調していました。共通するキーワードは「グローバリゼーション」「アウトソーシングや企業統合」および「技術」です。

 Leitz氏(米)は米国のプリント配線板産業がするためには、まずアメリカ経済の成長が持続しなければならないとし、その具体的な成長分野として電子商取引、メディカル、自動車、通信を挙げています。この成長に業界が対応していくためのツールとして電子商取引、データベースやネットワークの利用を挙げ、技術開発には共同プロジェクトを増やしていきたいとしています。日本と比べネットの期待が大きくまた開発は各企業独自で行う共同プロジェクトに期待する傾向が強いように思います。そして、まずお金、「人の金を使って仕事をする(Using Other peoples' Money to Do Your Work)」、デル・モデルをこの産業にも、といっているのもおもしろい。アメリカのプリント配線板産業はグローバル化により顧客、技術、資本関係ともに変革をせまられているが、結局はサービス、品質や競争精神の競争となろう。同盟関係を結びながらも独立に活動していきたい(Forming Alliances and Working Independently)、将来には楽観している、としながらも最後に世界的な生産能力の過剰について心配しています。

 日本からの報告はJPCA、野村総研の総力を挙げてまとめたといわれる労作で、貴重な情報がたくさん盛り込まれています(詳細はJPCAのホームページで読むことができます)。その中で、従来は米国が創造し、アジアが製造を請け負うかたちできたが、今後はアジアが新しい電子機器を創造し、自ら材料・装置・製造技術の開発を牽引していくようにならなければならない。またパソコンのようなデファクトスタンダード化した成熟市場では水平分業化(EMS、アウトソーシング)が進んでも、キーテクノロジーはLSIと電子回路基板に蓄積されていく。その開発は水平分業ではなく垂直統合あるいは垂直分業を指向して行くべきであろう、と強調されています。筆者には主旨は理解できるものの少し割り切りすぎかと、また、日本、アジアへの思い入れが強 すぎるように思いました。

 講演の最後に、業界は世界的にプリント配線板単体でのビジネスに限界を感じている。今までのような限られたパイの中での「奪い合い」から脱却し、集団的ウィン・ウィン(Win-Win)関係を構築していくべきだ。お互いの強み、弱みを認識し、共生していく道を模索すべき時代に入った。「個別企業の論理」から「共生の論理」へと転換していきたい、としめくくられました。

 日本ではひところ「共生」が合い言葉でした。それから数年、世界中で金融をはじめあらゆる分野でボーダーレスの競争の時代となり、否応ない倒産やリストラが吹き荒れることとなりました。日本政府も護送船団方式を維持できなくなり、自助努力、自己責任、リスクをとれ、と公然というようになりました。ベンチャー育成計画が進んでいますが援助は「自立型中小企業」を選別して行うとされ、「零細企業を見捨てるのか」という声も出たいるそうです[4]。ウィン・ルーズ(勝ち組・負け組)が従来以上に鮮明に分かれる時代です。ウィン・ウィンへの道は容易でないでしょう。

 かつて筆者は政治でも外交でも商取引でも交渉の結果は最終的には力関係や駆け引きの優劣で決まるもので、どちらかが得すれば、相手は損をすると思っていました。しかしある本で「妥協は双方の状況による。状況はつねにタイムスパン(時の幅)をもっている。短期における価値は、長期における価値ときわめて内容を異にしつつ等価たりうる。タイムスパンを異にしつつ妥協が成立しうるのだ[3]」ということばを読み、目からウロコがおちる思いがしました。そうか、短期的なメリットを求める人と、長期的なそれを求める人との取引では双方が満足できる取引(ウィン・ウィン)も可能なのだと理解できたのです。

 JPCA報告もよく見ると、ユーザーとセットメーカ、セットメーカとプリント配線板メーカの間でのウィン・ウィン関係をいっています。これらはお互い強く結ばれていますが立場(そして価値観も)ことなる同士です。双方が「得をする」関係の構築は可能なのでしょう。それをどうやって構築するかは大きな課題ですが。一方、プリント配線板メーカ同士の競争はどうでしょうか。上の本では「価値体系をともにする人々ないしは集団のあいだで、かえって妥協が困難でありうる」ともいっています。「異教は許容しても、異端は許さない」きびしさがありうるのでしょう。世界のプリント配線板メーカが同じ分野で、同じ戦略で、そして同じ価値観のもとで競争するとき、グローバリゼーションが進むとその競争は一層きびしく、ウィン・ルーズを避けることは難しいでしょう。

[1]Andy Leitz「Interconnectivity Leadership」(99/9/10「電子回路世界大会」)
[2]橋本 浩「アジア電子回路産業の将来ビジョン」(99/9/10「電子回路世界大会」)
[3]岡義達「政治」(岩波新書)
[4]「自立型中小企業の育成策」(日経99/9/20)


それぞれに日当たりをもとめて居場所をさがす

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