日本では「地球環境への配慮」を挙げる人が80%近くを占め、その一方「売上高やシェアの最大化」を挙げる人は14%にすぎません。これに対し、海外諸国では「地球環境への配慮」への関心が全体に低く、「売上高やシェア」重視の姿勢が目立っています。調査の対象がビジネスマンですから、まずは「売上高やシェアが第一」となるのは当然かもしれません。むしろ日本人が「売上高・シェアにこだわらなさすぎる」あるいは、「こんなに欲がなくてグローバルのきびしい競争に生き残っていけるのか」と心配する人も少なくないでしょう。
筆者はしかしこの数字は日本人の長期視点、考え方の健全さを示すものだと、むしろ誇りに思います。また日本経済にはそう言えるだけのふところの広さがあるのだと思うのです。環境は今でも深刻ですが、このままでは10年後には世界中が行き詰まることは目に見えています。エネルギー、地球温暖化、資源、食糧、廃棄物、環境ホルモンなど、どれをとっても今すぐに循環型社会に向けた対策をとる必要があります。しかし「現状でリサイクルされていない廃棄物は現在の市場の下ではリサイクルしないことが合理的な選択だからそうなっている」[2]のです。要するに今の経済システムが近視眼的で、視野が短かすぎる結果です。今、欧米でも環境問題についての関心が高まっていますが、環境問題の推進は政府、NGOが中心で、日々のビジネスにかかわる人た
ちは、競争が激しくて環境どころではないということかもしれません。
さて、このような環境重視と経済成長は両立するものでしょうか。筆者は十分可能だと思います。これまで世界に先がけ電子部品を小型化したのも、ファインパターンやビルドアップ法で現実の製品を作ったのも日本です。どれも海外では経済的でないとされていた技術を「もの」にしたのです。今もハロゲンフリー基板や鉛フリーはんだで世界をリードしています。川の流れのように従来技術は世界のどこかに流れて行くでしょう。しかしまた日本に新しい技術の芽が出て育つことにより2−3%の成長はつづけられると信じています。
京セラの稲盛さんは言っています。「日本人の特徴は@一所懸命努力して成功すると、すぐ慢心し傲慢になりやすいこと。その結果、築きあげてきた多くを失ってしまう。A集団での行動を好むこと。
21世紀は情報通信やインターネットに特化していれば、誰でも成功できるという論調には同調できない。これまで日本人が何度も行い、何度も失敗してきたパターンだからである。基本的には、各企業が独立自尊の精神で、自社の得意の分野を生かす戦略を立てるべきであろう。ただし、私が製造業出身だからかもしれないが、もし日本全体で目指すべき方向があるとすれば、それは高付加価値製品をつくりだす製造業ではないか。
日本人の特徴の一つは協調性と忍耐力があり集団で行動することを好むことである。この特徴は、独創性を発揮しなければならないソフトの分野では短所となるが、共同作業が必要となるもの作りでは長所となる。製造業は工夫に工夫を重ねることで、つまり人間の知恵を集積することによって、きわめて付加価値の高いビジネスになることができる。」
日本人はとかく集団で行動する、群れる、と否定的に言われることが多いのですが、これも日本人のリズムだと割り切りたい。日本の戦後復興も高度成長もそれによって達成できたのです。集団行動のマイナス面(排他的など)は意識して改めなければなりませんが、プラス面にも自信を持って21世紀を切り拓いていってほしいものです。