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「日本人のリズム」

 NHKの朝のインタビューで、小学六年生の写真を撮っているある写真家がいっていました。「子供一人ひとりの個性などといわないほうがよい。一人ひとり、それぞれのリズムがあるといいたい」。六年生になると背が急に伸びる子、しっかりした将来を描く子もいれば、のんびりしていて幼く、同級生の女の子に「幼稚ね」などといわれたりする子もいます。みんな心配ない。見守ってやることだといっていました。ジャーナリズムに乗せられてあまりに個性だ、能力だというと子供も悩み、親も悩みます。

 正月の新聞に「世界のビジネスマン1500人のアンケート」の結果が出ていました。その一部を表1,2に示しました[1]。


表1 2025年の日本の経済力

 1位 2位 3〜5位6位 分からない

日本人2.518.666.412.50
外国人11.0 33.0 50.0 5.0 6.0 


 現在3位以下を大きく引き離して世界第2の位置につけている日本が、25年後には3位以下に後退するとみる日本人が80%も占めています。これに対し外国のビジネスマンは44%(米国では58%)が1〜2位にとどまると見ています。一方もっとも急成長する国は内外を問わず中国とされています。この結果について識者の多くから日本人はあまりに悲観的だと心配する声が聞かれます。

 そこで簡単な計算をやってみました。各国の現在のGDPと成長率を仮定して25年後を予測するのです。数字にそれほどの精度はありませんが結果に大きな違いはないと思います。各国の成長率を中国8%(中国政府の目標数字。25年も維持できるかどうかは疑問)、アメリカとドイツ(旧西独)3%、日本は3%と1%(1%は今年の政府見通し。アメリカからは低すぎるとハッパをかけられている)の2通りに仮定しました。


 アメリカ725  1518百億ドル(3%/年) 
 ドイツ183  383 (3%/年) 
 中  国51  349 (8%/年) 
 日  本459  961 (3%/年) 
     961 (1%/年) 

 たしかに、日本が成長を放棄しない限り、短期間に3位以下に後退することはありそうもありません。日本だけが年率1%の低成長率がつづくとしてもドイツにも中国にも追い付かれることはありません。とはいえ、日本は「寝て暮らせる」ということではありません。海外の人たちと同様の努力はするとしての話です。日本には人口の減少、高齢化、教育、環境など成長を阻害する要因がたくさんありますが、各国それぞれに課題を抱えていて、筆者には客観的に見て日本の抱える問題が一番大きいとは思えません。一番問題があるとすれば成長の意欲、元気を失うことだと思います。

 上記アンケートでもう一つ注目されるのが「次世代の企業経営で重視されること」に対する各国ビジネスマンの回答です。その結果を表2に要約しまし た。


表2 次世代の企業経営で重視されるのは

  地球環境への配慮売上高やシェアの最大化

 日   本7814
 米   国30 30 
 ヨーロッパ43 57 
 ア ジ ア53 51 


 日本では「地球環境への配慮」を挙げる人が80%近くを占め、その一方「売上高やシェアの最大化」を挙げる人は14%にすぎません。これに対し、海外諸国では「地球環境への配慮」への関心が全体に低く、「売上高やシェア」重視の姿勢が目立っています。調査の対象がビジネスマンですから、まずは「売上高やシェアが第一」となるのは当然かもしれません。むしろ日本人が「売上高・シェアにこだわらなさすぎる」あるいは、「こんなに欲がなくてグローバルのきびしい競争に生き残っていけるのか」と心配する人も少なくないでしょう。

 筆者はしかしこの数字は日本人の長期視点、考え方の健全さを示すものだと、むしろ誇りに思います。また日本経済にはそう言えるだけのふところの広さがあるのだと思うのです。環境は今でも深刻ですが、このままでは10年後には世界中が行き詰まることは目に見えています。エネルギー、地球温暖化、資源、食糧、廃棄物、環境ホルモンなど、どれをとっても今すぐに循環型社会に向けた対策をとる必要があります。しかし「現状でリサイクルされていない廃棄物は現在の市場の下ではリサイクルしないことが合理的な選択だからそうなっている」[2]のです。要するに今の経済システムが近視眼的で、視野が短かすぎる結果です。今、欧米でも環境問題についての関心が高まっていますが、環境問題の推進は政府、NGOが中心で、日々のビジネスにかかわる人た ちは、競争が激しくて環境どころではないということかもしれません。

 さて、このような環境重視と経済成長は両立するものでしょうか。筆者は十分可能だと思います。これまで世界に先がけ電子部品を小型化したのも、ファインパターンやビルドアップ法で現実の製品を作ったのも日本です。どれも海外では経済的でないとされていた技術を「もの」にしたのです。今もハロゲンフリー基板や鉛フリーはんだで世界をリードしています。川の流れのように従来技術は世界のどこかに流れて行くでしょう。しかしまた日本に新しい技術の芽が出て育つことにより2−3%の成長はつづけられると信じています。

 京セラの稲盛さんは言っています。「日本人の特徴は@一所懸命努力して成功すると、すぐ慢心し傲慢になりやすいこと。その結果、築きあげてきた多くを失ってしまう。A集団での行動を好むこと。

 21世紀は情報通信やインターネットに特化していれば、誰でも成功できるという論調には同調できない。これまで日本人が何度も行い、何度も失敗してきたパターンだからである。基本的には、各企業が独立自尊の精神で、自社の得意の分野を生かす戦略を立てるべきであろう。ただし、私が製造業出身だからかもしれないが、もし日本全体で目指すべき方向があるとすれば、それは高付加価値製品をつくりだす製造業ではないか。

 日本人の特徴の一つは協調性と忍耐力があり集団で行動することを好むことである。この特徴は、独創性を発揮しなければならないソフトの分野では短所となるが、共同作業が必要となるもの作りでは長所となる。製造業は工夫に工夫を重ねることで、つまり人間の知恵を集積することによって、きわめて付加価値の高いビジネスになることができる。」

 日本人はとかく集団で行動する、群れる、と否定的に言われることが多いのですが、これも日本人のリズムだと割り切りたい。日本の戦後復興も高度成長もそれによって達成できたのです。集団行動のマイナス面(排他的など)は意識して改めなければなりませんが、プラス面にも自信を持って21世紀を切り拓いていってほしいものです。

[1]「2025年の日本と経済」(日経00/1/4)
 世界のビジネスマン約1500人に対するアンケート。日本408、米国409、欧州(英、独、仏)453、アジア403(中国、韓国、シンガポール)の部長以下のホワイトカラー対象。表の数字は筆者が加工したもの。表2の数字は複数回答の結果と思われる。
[2]植田和弘「循環型社会、永続を視野に」(日経00/1/24)
[3]稲盛和夫「モノ作り大国は必ず復活する」(Voice00/1月号)


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