JPCA NEWS 2001.7

JPCA Home / Back / Menu / 前号 / 次号

「モジュール」

 クーラーが効かなくなったので点検してもらったら、プリント板に搭載したリレーがダメとのこと。10年も使った古いクーラーですが、廃棄物は出したくないので、可能なら直して使うことにしました。修理費はプリント板が15,000円、他に出張費、点検費4,400円で計20,000円弱。リレーだけなら500円もしないと思いますが、プリント板ごと取り替えるといいます。プリント板は15センチ角ほどの片面板ですがスペア部品となると高くなるものです。さて修理してあと何年使えるか。

 最近、筆者の周りにもフル機能のノートパソコンを携帯する人が増えました。しかし重いといってこぼす人が多い。結局、持ち歩けないという人もいます。ある先生は軽さを第一の基準にして機種を選択しているといいます。ところが選んだ機種の調子が悪くたびたびハングアップするとのこと。そして、「はずれ品を買った」とぼやきます。筆者は「修理したらどうですか。不良個所は部品1個かコネクターの接触かはんだ付け1ヶ所くらいでしょうから。そこだけ直せばかえって新品より信頼性が高くなり、多分10年は使えるでしょう」と先生にいいました。ただし、残念ながら今のノートは修理向きに設計されていません。筆者もかつてノートの画面がときどき出なくなるので、メーカーに持ち込んだら、マザーボードを交換するという。費用は70,000円かかるとのこと。結局、修理はあきらめ、だましだまし使うことにしました。釈然としない思いをしながら。

 今後の経済成長には資源、エネルギー、環境などたくさんの壁がありますが、中でもいちばん早く立ちはだかってくるのは、廃棄物の捨て場と筆者は思います。年間1,000万台ものパソコンの捨て場がいつまでも確保できるはずがありません。悪徳業者の不法投棄がたびたびマスコミに報じられますが、それを取り締まり、罰則を強化するだけでは解決できません。問題は深刻な最終処分場の不足です。住民の反対で処分場の新設は急減し、関東、近畿ではゼロになったといわれます。処分費用は3年間で2倍になったとのこと[1]。まるで半導体の集積度アップのペースです。他県からのゴミの持込を拒否する県も続出しています。東京都の処分場はあと1年足らずの寿命とか。裏山の散歩コースがいまにゴミに埋まるのではないかと心配しています。

 電機メーカーや車メーカーはリサイクル技術開発やリサイクル体制の整備に懸命ですが、今のリサイクル(分別し、原材料にもどす)程度ではとても追いつかないでしょう。日本の住宅寿命は20年余り、こわした家の使える材料をいっぱいに再利用しても、やはり大量のゴミが出るはずです。ゴミの発生を減らすには住宅を長持ちさせるしかありません。住宅では寿命100年の計画が進んでいます。その基本は建物の「骨組(スケルトン)」と「内装」を分け、骨組は100年もたせ、内装は世代、生活スタイルの変化に応じて変更できるようにすることです。航空機も寿命が長い。このほどリタイヤした自衛隊のジェット練習機T33は43年も使用たとのこと。パソコンの場合はどうでしょうか。ひところ「ハード」と「ソフト」に分け、ハードは長持ちさせ、機能アップはソフトウェアの入れ替えで、といわれた時代がありました。しかしその後のハードの進歩が速すぎて、ソフトウェアも最新のハードに対応させるためどんどん大きく、重くなり、結局ハードもソフトも2年おきに入れ替えるような状況になっています。こんなやりかたは長くは続きません。最大の理由は古い機種の捨て場がなくなるから。そこでパソコンについても建物と同様、ハード自体を「骨組」部分と「内装」部分に分け、少なくとも「骨組」部分については今の5倍、10年くらいはもつ設計にすることが必要になると筆者は考えています。

 最近、システム化やモジュール化という言葉が自動車や電子機器産業でよく使われるようになりました。自動車産業では、組立ての一部を部品メーカーが請け負い、ユニットにまとめて納入する「モジュール生産」が広がっています。電子機器のEMSに相当するでしょうか。ただしモジュールの意味はいまひとつわかりにくい。プリント板でもMCM(マルチチップモジュール)やモジュール基板という用語が用いられますが、従来のプリント板とどこが違うのか。IEC用語ではモジュールとは「一つの組立体系の中での分離可能なユニット」と定義しています。要するに「ばらせるユニット」というだけです。MCMは当初「ICチップが密接配置されたマイクロ回路」と定義されましたが、これではあまりに漠然としているということで、「シリコンエリアが30%以上を占める」を定義に追加する提案がなされています。筆者は「区別可能な機能性をもつデバイスで、ユニットとして取替え使用できるもの」という定義が一番モジュールの要件を押さえていると思います。そして一つのシステムをできるだけ細分化し、標準化した多数のモジュールを組み合わせて構成することこそ、廃棄物の発生を減らし、同時にシステムの保守やレベルアップも可能にする決め手になると考えています。

 今のノートパソコンもモジュールでできているといわれるでしょうが、マザーボードが最小単位では大きすぎるし、高すぎます。故障して、買った店に持っていっても直せない。メーカーに送り返してもラチガあかない。結局、がまんして使うか、まるごと買い換えることになり、「取替え使用できる」までにはなっていません。それに比べると街の自転車屋さんは立派です。先日調子が悪いと買った店に持っていったら、「ビスが1本抜けていました」とタダで直してくれました。

 最近は各社「独自設計」にこだわらなくなり、モジュール化が進みつつあるようです。「家電・パソコン修理専門店」のかんばんも見かけるようになりました。大変いい傾向ですが、まず優秀な修理業者や修理技術者が育ってくる必要があり、そのためにもこれらの人たちが社会的にもっと認められ、経済的にも食えるようになってほしいものです。

 さてモジュール化の中でプリント板はどこに位置付けられるでしょうか。プリント配線板(ベアボード)はただの部品です。そこにICなどが搭載されてはじめて独立した機能を持つ一つのモジュールとなります。機能を持っていても取り外しできないもの(例えば半導体のベアチップ)はやはりモジュールでない。この意味で電子機器のモジュール化ではプリント板が非常に重要な役割を担うことがわかります。ただしBGAも交換できてはじめてモジュールといえます。一方でプリント板はモジュールとモジュールをつなぐマザーボードの役割をもっていて、これはシステムの骨格部分です。その用途のプリント板には、建物の骨格と同様、長い年数使うことのできる、優れたアーキテクチャ(建築様式)と、収容する部品以上に丈夫で長持ちする高い信頼性が求められます。

 このような骨格とモジュールを分けてシステムが設計され、修理や性能向上が部分的なモジュール交換だけですむようになれば、廃棄物の発生は大幅に減らすことができるはずです。あるアンケートによれば、修理に出せる金額は10,000円までということです。10,000円未満のモジュールを集めて、組みみ立て、修理、改造までDIYでできるようにならないかと筆者は夢見ています。

[1]「産廃埋め立て料急騰」(朝日01/6/18)

JPCA Home / Back / Menu / 前号 / 次号


社団法人日本プリント回路工業会
Japan Printed Circuit Association