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JPCA NEWS 2004.2 JPCA Home / Back / Menu / 前号 / 次号 中国の先端と平均 |
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今年のJPCA賀詞交歓会での経産省福田課長のあいさつ。「プリント板業界の皆さんは好調の中で正月を迎えられ、さぞ美酒に酔われたことでしょう。電子業界の中でも半導体などは政府の支援を受けて競争力回復に取り組んでいるが、電子回路業界はそのような助けを借りずに独力で立派な実績を挙げられている・・・」と持ち上げた後、「日本の景気回復は中国の高成長に負っているところが多い。しかし中国の『実需』がどうなるのかについては十分注意してほしい」と締めくくりました。 実際、中国は昨年SARS禍があったにもかかわらず9.1%も成長しました。高度成長を引っ張ったのは設備投資と輸出であり、中国の輸入は40%も増えました。日本の対中輸出は33%増え、電子関連業界も大きな恩恵を受けたでしょう。ただし中国の成長は内需主導とはいいがたく、急激な設備投資で生産能力が需要予測を大きく上回り(自動車では40%)、『実需』に結びつかない投資も多いといわれます[1]。「鉄鋼の全世界消費量の25%、石炭の30%、セメントの50%、電力の13%が消費された・・・」[1]にはおどろきます。 一方、沿海・都市部と農村部の所得格差が大きく、高度成長でその格差が広がっています。中国の一人あたりGDPは全国平均で1090ドル、これに対し、1位の上海は4600ドル、最下位の貴州省は373ドル(国際的に最貧レベルとされる1人1日1ドルに等しいが、これは貴州省3800万人の平均値(筆者注))。破綻した建設工事などで賃金未払いが頻発している。「・・・重慶市を視察した温家宝首相は、途中下車してある村を訪れた。ひとりの農婦は、「立派なことを言え」という村幹部の忠告に逆らい、「出稼ぎの夫の賃金は1年間も未払いです」と、首相に直訴した。その夜、県のはからいで、未払い分の2240元をもらえたが農婦は感極まって泣いた・・・出稼ぎ労働者への未払い賃金は1兆4千億円にもなる」[2]。年2240元は1日1ドルにもなりません。一国の中にこれだけの格差があって社会の安定が保てるものかと疑問に思う人も多いでしょう。 一方で中国は、日本の相次ぐロケット、衛星の失敗を尻目に、有人宇宙船を成功させました。スポーツや文化・芸能、科学技術の分野でも存在感を高め「中国脅威論」が広がっています。その中国に日本は多額の経済支援を行っているのです(2000年で800億円、世界の対中経済協力の60%)。 中国に対する見方には大きな幅があり、立場により言うことが正反対にもなります。急成長と混沌の中国がどこに行くのか、プリント板業界にとっても大きな関心事でしょう。以下は中国の代表的な経済学者ファン・ガンの本[3]からの抜粋です。 「国際社会では時折、中国の崩壊論が出てくる。多くの深刻な問題を抱えているからである。「あらゆる面で劣っている」という悪条件の下でいかに諸外国より速く成長し、先進国との格差を縮めるか・・・ 中国は今でも一人当たりGDPが1000ドル前後の発展途上国である。先進国との格差を縮小するために、我々は実状に合わず、高い代償を払っても成功する可能性の低い「ハイテク発展戦略」を追求してはならない。中国には重層的な発展を遂げる条件がそろっているが、相当長期にわたって、中国の競争力の源泉はやはり安い労働力に基づく「比較優位」であろう。雇用創出の必要性を合わせて考えると、労働集約型産業は今後も中国経済の主役であり続けるだろう・・・ 最も忌むべきことは、まさに「蛙跳び」や「大躍進」「洋躍進」などの類である。短期間にハイテクや資本集約型産業などの分野で強い国際競争力を目指すような発展戦略と産業政策が、結局発展のペースを落とし、先進国との格差を広げてしまう・・・ 多くの先進国にとっての「オールド・エコノミー」は、中国にとっては、まだ発展の余地のある「ニュー・エコノミー」である。中国のような人口の多い国にとって、労働集約型産業の発展は、より重要な社会的意味を持つ。それは、雇用の拡大である。5億人の農村労働者の大半が、工業化、都市化、近代化によって吸収されれば、この人たちの所得水準は高まり、国内市場が拡大し、国全体の持続的な発展が達成できる。そうすれば、需要不足で成長の速度が抑えられることも、貧富の格差、都市・農村の格差、地域格差による社会の不安定性で発展が阻害されることもなくなる。逆に資本集約型と技術集約型産業の発展を強調し、限られた資源をハイテク・新技術に投入し、ごく少数の企業だけが成長し、ごく少数の科学技術人材の所得だけが増え、多くの労働者が比較的高い所得の就職機会が得られない貧困状況に陥れば、我々は社会危機に直面することになる・・・ 所得格差の拡大は改革と発展にとって避けて通れない段階である。改革の目標の一つは、過去の絶対的平等主義を改めることであり格差拡大はその必然的な結果の一つである。格差が大きすぎれば貧困化の加速に歯止めをかけなければならないが、格差拡大の過程そのものを否定してはならない・・・ 中国の農業が集約的生産を実施できないのは、技術がないためではなく、過剰な人口の存在による。中国のWTO加盟により、もはや農業で農民の所得を増やすことは難しくなった。農民問題の突破口は農民でなくなることである。これは中国の数千年にわたった問題であるが、今は解決のチャンスが巡ってきた。もし中国がより多くの非農業の雇用機会を作り出すことができれば、農民は基本的に農業から離れることができる。これはすなわち中国の工業化と都市化の過程であり、さらに40〜50年がかかるだろう。このような状況では、中国には世界の製造センターになるという選択肢しか残されていない。中国は科学技術センターになるべきだと異議を唱える人がいる。しかし、たとえ中国が科学技術センターになったとしても、同時に製造センターでなければならない。そうでなければ、数億人の農民は都市で何をすればよいのだろう。農民の仕事はエンジニアではなく、やはり製造業である。おそらく全世界の製造業が中国に移転しても、中国の労働力をすべて吸収することはできない・・・ 途上国は二つの「比較優位」を発揮しなければならない。一つは、労働力の比較優位である。途上国は特に労働集約型製品の生産でコスト競争力が高い。このような優位は、「貧困の優位」とも言える。もうひとつは、後発性優位である。遅れているため、ほかの人の累積された知識や、技術、管理能力、市場経験を学ぶことができる。これによって、遠回りせず最短距離で格差を縮めることができる。また、貧乏人は先進国の裕福さに追いつくまで努力するインセンティブが比較的高い・・・ 市場は一夜で出来上がるものではない。古いルールが完全に消滅しておらず、新しいルールがまだ出来上がっていない状況では、混乱や「無秩序」という様相を呈することがある。一部の人はこれで国中が混乱しているかのようにパニックになってしまう。しかし、実際には、混乱がない方がおかしい。ペテン師が多く偽物や模倣品が氾濫していることで、市場経済のせいで人々は道徳観念をなくしてしまったという指摘がある。しかし制度改革の初期に、偽物や模倣品が増えることは自然の流れである。古い体制やルールに適応していた道徳、規範、行動の基準が解体され拘束力を失いつつある一方、新しい市場経済のルールや規範が完全に出来上がっていない環境では、「制度上の真空地帯」が生じ「悪い人」の出番が多くなる。新しい商業道徳が出来上がるまでは、偽物の発生は避けられないが、騙し合いの中で誠実に協力し合う市場経済体制が徐々に形成される・・・ 中国の2020年時点での経済は大きな発展を遂げてはいるものの、低所得の発展途上国であることは変わりがない。今後、中国経済が年7%伸びると仮定しても1人当たりGDPは3000ドルにとどまる。工業化と都市化の進展を考慮して、年間1500万人の農村労働力が非農業に就職できると仮定すると、約2.5億人の農民が農業から転職できることになる。これによって、農村に残って農業を主要な収入源とする農民数は1.5〜2億人にまで減少する。 2020年においても、中国の地域格差は依然存在するが、地域間の一人当たりの所得格差の拡大には歯止めがかかり、格差が縮小する方向に向かう・・・」。 以上、引用が長くなりましたが、筆者なりに理解したファン・ガンのシナリオです。著者の目は中国の先端ではなく、国全体の平均、底辺に向けられています。農村、国営企業が安定化しない限り中国の発展はない、そして発展には時間がかかる。「蛙飛び」の発展を夢見てはならない、としています。「warm heart, cool headで展開する慎重的楽観論(訳者あとがき)」には説得力があります。 ただ、中国が20年のうちに世界の製造工場を全部集めるというシナリオには無理があるでしょう。ベストセラーの「バカの壁」ではありませんが、物事にはすべて壁があります。次回はその壁について考えてみたいと思います。 |
| [1] | 社説「中国経済の質的向上を望む」、他(04/1/21日経) |
| [2] | 莫邦富「団欒なき春節もある」(04/1/24朝日) |
| [3] | ファン・ガン「中国 未完の経済改革」(関志雄訳、岩波2003) |

中国の2つの暮らし、20年後どうなっている?