|
しかし、最近の半導体の高集積化が急速で、この構成でのファンアウトがだんだん難しくなってきました。実装はミクロの世界とマクロの世界をつなぐ架け橋ですが、ミクロの世界だけが先に伸びていき、マクロの世界(人間サイズ)は変わらないので、橋の長さがどんどん長くなっていくのです。かつて、ライン幅10ミクロンは半導体の領域でしたが、いまやプリント配線板で10ミクロン台のパターンの実現が求められています。
植物の芽、葉、枝、幹、根の個々の働き、それぞれの機能を有機的に結びつける精妙な仕組み、風雨にさらされながら何千年も生きる巨木、人はそれを見て感動します。その畏敬の念から各地に巨木信仰が生まれ、いまの巨木ブームにつながっているのでしょう。「システム」とは、@複数の構成要素から成り立ち、Aその構成要素が、ばらばらな存在ではなく、相互に依存しつつ、B全体としてまとまった機能を発揮している要素の集合体、とされています。その意味で、木は理想的な有機システムです。すごいと思うのは、枝が折られ、幹にウロができても、その部分を切り離して、生き残れることです。枝を落すと、その付け根から新しい芽が出てきます。まさに生命力です。他にも不思議なことが。世界一の巨木、「セコイア」は高さ111.7m、そんな高いところまでどうして水分を上げられるのか、筆者にはいまだよく分かりません(真空で吸い上げても10mまでしか上がらないのに)。
コンピュータなどの電子機器も、会社や社会の組織も、交通、電力などのインフラも、みなシステムです。しかし人間の作ったシステムは、生体システムにくらべると、なんとちゃちなこと。上記、システムの要件@の「要素」のレベルがどんどん上がっても、Aの有機的な「相互依存」がなかなかスムースにいかないのです。「相互依存」は電子機器では「インタコネクションと役割分担」、社会システムでは「コミュニケーションと役割分担」に相当します。インタコネクションやコミュニケーションのルートはできていても、情報の行き来と、役割分担についての相互理解がうまくいかないのです。
生体ではシステムがうまく機能するのに、どうして人間の作ったシステムはギクシャクするのか、かねて疑問に思っていました。そして思い当たりました。生体はたくさんの要素でできていても、元はといえば1個の細胞、それが分裂して「万能細胞」となり、機能分化して特定の器官になり、特定の役割を分担するようになったのです。DNAはみな同じ、環境によって、葉っぱにもなれるし、幹にも根にもなれます。どんな役にも付くことができるのです。小枝を折って地面に挿せば、成長して大木にもなります。
人工のシステムはこれと違い、システムの要素はみな違うDNAでできています。育ちも違います。これらの要素がそれぞれ役割を分担し、協力し合ってこそシステムは円滑にまわるのですが、どれか1個の要素が、みずからのDNAをかたくなに主張してバリアを高くすると、拒絶反応でシステム全体が機能しなくなります。この意味で、人工システムには自律的な安定性がなく、求心力を維持するための働きかけがないと不安定になりやすいのでしょう。父ちゃん母ちゃんの小商売、創立間のないベンチャー企業や、小人数の気の合った仲間のサロン、などは意識せずにうまくいくでしょう。しかしベンチャー企業でも規模が大きくなってくると、おたがいの顔が見えなくなり、社長は「たえず志を語らなければならない(孫正義)」ようになるのでしょう。
さて、電子機器というシステムの中で、半導体と実装はもっとも重要なシステム構成要素です。それぞれに独自の発展を遂げてきました。しかし、システムの要件である「有機的に関係し合い」という点については、筆者はいささか不十分ではないかと思うのです。半導体をやってきた人の中には、実装を一段下に見る人もいるようです。3K職場には関わりたくないと。一方、実装をやっている人には、半導体に、理由のないコンプレックスを抱くこともあるようにみえます。技術的に相互依存が強いので、一緒に仕事はしても、お互い「やらされている」「やってくれない」「相手のレベルが・・・」などの思いがないでしょうか。
日本人は序列意識が強いといわれます。誰でも、はじめての人に会うときは相手の値踏みをします(いやな言葉ですが)。しかし値踏みをするのはどこの国の人も同じ。赤ん坊でも、イヌでも、サルでも敏感に相手を読みます。残念なのは、日本人は、相手が上と見れば卑屈になり、下と見ると威張る、といわれることです。全てではないにしても、その傾向があるのは否定できないでしょうか。
国土交通省の調査によると、東京出身者の半数が「序列意識」を持っているそうです。こんな意識が生まれる要因として、東京出身者の半分が「テレビ、新聞、雑誌などマス・メディアの情報」を挙げ、「東京以外の場所の情報がなく、東京だけしか知らないからだと思う」と回答した、ということです。
要するに、相手を知らないから、故のない優越感、劣等感を持つことになるのでしょう。わたしたちは半導体を知りません。半導体をやっている人は多分実装をあまり知らないでしょう。それぞれに得意とするところがあるが、それぞれに悩みもあるはずです。お互いが「双方向のコミュニケーション」について「意識的」に努力すれば、半導体、実装を含めた電子機器システム全体の技術開発は、よりスムースになると思います。そのためにどうするか。やはり「同じ釜の飯を食う」ことではないでしょうか。
|