
JPCA NEWS 2006.12
歴史の古い会社、新しい会社
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たまたまJPCAの会員リストを見ていて、名前を知らない会社が多いのに驚きました。規模は小さくても半世紀以上も営々と事業をつづけてこられた会社がたくさんあります。永年この業界にお世話になりながら、そのような会社の名前をはじめて目にするというのは申し訳ないことです。 JPCAの会員総数約490社の半分以上は150人以下の中小企業です。中小企業会員の設立年と従業員数をグラフにしてみました(図1)。設立年度別にみると、最も多いのが1970年代設立で、全体の28%。60年〜89年の30年間の設立をあわせると70%を占めます。グラフの山はちょうどプリント板産業の高度成長のピークの時期に対応します([1], 図2)。プリント板産業は1960年ごろにテイクオフし、70年代から80年代はじめにかけてはなんと年率23%もの成長を遂げました。いま急成長する中国のプリント板産業にも比肩する高度成長です。それが1984年の世界的な「PCショック」で急ブレーキがかかりました。以降は起伏がありながら平均すると年率4%程度の安定成長です。その影響か、90年代以降設立のJPCA会員は数がずっと少なくなっています。今後新しく加入する企業を含めても70年代、80年代の企業数には多分届かないでしょう。業界の元気な時代に参入企業(従ってJPCA入会企業)が多いのは当然。しかし、年4%伸びる業界は立派な成長産業であり、JPCAショーも盛況です。新規加入がもっとあっていいのでは、と思います。 |
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図1 JPCA会員企業の設立年と規模 |
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| 図2 国内電子基板の生産額推移 |
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筆者は、規模の小さい古い会社や、若くて小さい企業に関心があります。「会社の寿命30年説」の中、50年〜100年にわたってどのように変身、脱皮しながら経営をつづけてこられたのか。また、新しい会社はどんな分野で、どんな哲学を持って会社を興こされたのか。前者では「企業の持続可能性」を、後者では「業界の今後の進路」をみる上で参考になるはずです。 現状を見れば、業界の規模を支えているのは大企業であり、大企業の比重は年々高まっています。研究開発でも人員、金額とも大半は大企業によって担われています。しかし、新しい事業の「芽」の多くは大学なり、ベンチャーなりの「個人」から出るはずです。大企業は事業化し、規模を拡大することは得意でも、「管理された研究・開発」からは新しい芽は出にくく、「管理されない研究・開発」も必要とされています。 スリーエム社は「ポストイット」などユニークな製品を次々に開発して巨大企業に成長したエクセレントカンパニーですが、筆者はこのような開発主導の戦略でどこまで成長をつづけられるのかと注目していました。数年前、会社を訪問したとき、当時の会長が研究開発の管理を強化していて、自由な開発がやりにくくなっている、と同社のある人が洩らしているのを聞きました。この巨大コングロマリット企業の新陳代謝を促すため、昨年、会長に招かれたジョージ・バックレー氏は次のように言っています。 「成長の方法は社内の充実や買収戦略、地域的な拡大など色々ある。多くの人はなかでも買収を手軽な方法だと考えているようだが、私のこれまでの経験からすると優先すべきなのは現在ある基盤をきちんと防衛することだ。まずこれができていないと想像以上に早い衰退を招くことになる。・・・ スリーエムは個人の創造性とチームワークを重要視し、それを尊重するためのユニークな仕組みを持っている。それは「15%ルール」と呼ぶシステムで、技術者が就業時間のうちの15%を使って、自由にプロジェクトを手掛けることができるというものだ。これによりクリエーティブな精神を解放し、能力を最大限に引き出すことができる。・・・ 我々は様々な側面からイノベーションをつくり出す努力を続け、成長してきたが、もし新しい技術をつくり出せないのであれば、成長を目指して外部から買収することも決して躊躇しない。・・・ アインシュタインは「想像力は知識よりも重要である」と語った。知識はだれでも身につけられるが、想像力はまねされない・・・ [2]」。 社名にアインシュタインを冠したJPCA会員企業「アインテスラ」。設立2004年、社員5人の小企業で、製品は薄膜形成用のディップコータ。「物理学者アインシュタインと電気関係の大発明家テスラから命名し、彼らと同じような無限の可能性を秘めたひらめきをもつ知的な技術集団となり、21世紀を代表する企業を目指します。」との意気込みが頼もしい。 90年以降設立の若い会員企業には、材料や設計、検査関連などの装置、システムのメーカーや米、EU、アジア企業の製品を取り扱う商社が多い。プリント板メーカーの新規加入は少なくて、大手企業試作部門の分離などにとどまるのがちょっとさびしい。 目にとまったユニークな新しい会社には、「マイクロハード」(90人、圧延法による極薄銅箔製造)、「目白プレシジョン」(40人、プリント板用ステッパー露光機)、「オーエイチティー」(125人、非接触電気検査機)などがあります。 老舗の企業のホームページもいくつかのぞいてみました。染料商社として創業、今では現像、エッチング液やその装置も手がける石井化学産業(20人)、真空管ラジオからスタート、プリント板、アセンブリ、電磁環境対策、プリント板製造装置と展開するサンテック(50人)、美濃和紙の産地で謄写版原紙メーカーとして発足し、スクリーン印刷資材、インキ、印刷機械に進出したミノグループ(144人)など。工作機械、エレクトロニクス機器を扱うムラキ(129人)は時計・宝飾品から出発した商社で今年創業100年。それぞれ発足時の事業の「地つづき」で事業を広げ、変身を遂げてきました。 JPCA会員のホームページをいくつか見ましたが、事業、製品の内容はくわしく載っていても、自社の理念、強み、目指す方向を熱く訴えたものは少ないと感じました。どのホームページにも求人欄が出ていますが、若い人にアピールするにはすこし物足りないように思います。先日、早稲田大学、遠藤先生の話を聴きました[3]。その中に「経営にはまずビジョンがなければならない。『なぜ』この会社は存在するのか、の理念、思い、である」との言葉がありました。カタログの最初のページに社長の写真と「ごあいさつ」が載っているような会社はたいした会社でないとは野口悠紀雄先生の言ですが、「ごあいさつ」は大事です。ただし中身は、外には自社の強みと目指すところを訴え、内には従業員の求心力となる熱い志を語って欲しいものです。JPCA会員のホームページにもいくつか魅力的な文面がありました。 「人類にとって光と影を操ることは永遠のテーマ。光の応用技術を基幹とする最新鋭かつ信頼性の高い資機材を、国際的視野を持って、広く世界のあらゆる業界に提供し、その業界の発展に寄与することを企業活動の基本としています。・・・超優良企業たらんとの目的意識を持ち努力しています(目白プレシジョン)。」100年の歴史を持つ碌々産業(148人)の社名は「公等碌々人によりて事を成すもの也」(人を結集してこそ力。「初めに人ありき」)と謳う漢詩の一節から来ているとははじめて知りました。ヤマトヤ商会(100人)は創業80年。その社是「経営は、意志の決定と、その徹底的な実行である。会社の意志とは、社会・お得意様のニーズそのものである。1.会社は"社会の公器"である。2.製版・印刷及びその関連の産業に奉仕・貢献することによってのみその存在の意義があり、且つ、繁栄を約束されている一つの運命及び利益共同体である。・・・」古風ながら格調が高いと思いました。 |
| [1] | 「2006年の日本の電子回路産業」(JPCA 2006/6) |
| [2] | ジョージ・バックレー「人づくり 競争力生む」(日経06/11/22) |
| [3] | 遠藤功「日本のエレクトロニクスメーカーの競争戦略と現場力」((財)電子回路基板技術振興財団シンポジウム予稿06/11/30) |
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